大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

豊島簡易裁判所 昭和43年(ろ)335号 判決

主文

被告人を罰金弐万五千円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五百円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都板橋区小茂根三丁目四番十五号株式会社協立運送店の経理担当者であるが、昭和四十二年六月十六日午後四時十分頃、同店構内において、高橋三郎(当時三十二年)と同人所有の貨物自動車売買に関して言い合いを為し、右高橋が「社長が帰るまで待たせてくれ」と云うのに、「帰れ」と云つて同店事務所より押し出した上、同人を投げ飛ばす等の暴行を加え、同人の頭部を事務所入口附近に駐車中の自動車の車体に打ちつけさせ、よつて同人に治療約四十五日間を要する頭部打撲症の傷害を負わせたものである。

(証拠)(省略)

(正当防衛の主張に対する判断)

弁護人は、被告人の行為によつて、高橋三郎が本件のような傷害を受けたとするも、右は高橋の被告人に対する急迫不正の侵害に対し、これを防衛するために止むことを得ざるに出でた行為であるから、所謂正当防衛であると主張するのであるが、前記当公廷における証人高橋三郎、同佐藤香代、同佐藤春雄の各供述によれば、正当防衛行為とは認められず、右弁護人の主張は採用できない。

(法令の適用)

被告人の前記行為は、刑法第二百四条、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号に該当するところ、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で被告人を罰金弐万五千円に処し、刑法第十八条により右罰金を完納することができないときは、金五百円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置し、訴訟費用につき、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に則り、その全部を被告人の負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例